(閑話休題) 1928年の曲です。経済的大変動を前にして、文化的にはそれとバランスを取ろうとするかのように、落ち着いた雰囲気が流れます。ビリーホリデイがまだ13歳のころできた曲です。でもビリーは、もう子供時代を終わろうとしていたし、後年、この曲を歌うとき、その後の時代を考えると、少し幸せな気分を思い出していたかも知れません。 続(訳詩ノート) 最後の「わたし、ただのひと、ひきょうものよね」を「ただのひと、わたし、ゆうきなんかない」に変更します。「coward」は「卑怯」という意味が辞書にありますが、もう少し考えてもいかなと思いました。どちらにしても、はぐらかした言い方で、人に自分について説明するための言葉として選ばれています。 この歌は、「へんな(funny)」なひとに対するほんのりとした愛情が感じられますが、それを、いろいろとはぐらかしているところが、もどかしく、おもしろいですね。
(訳詩ノート)
「funny」っていう言葉は、我々もよく知っているものです。それを訳すとき、「面白い」とか「可笑しい」とか「変」とか訳しても、それがfunnyです。一つの日本語単語に拘る必要はなくて、誰でもよく知っているのがfunnyです。そして、「I 've got a man crazy for me」は、「わたしのことすきなのね」にしました。それ以外にないですね。たぶん、これも、我々のよく知っている気持ちですが、彼らは英語でそう言うとしても、我々は、こういう風に言ってもらいたいですね。 「私にクレイジーになってる人がいるの」じゃなくて。 (歌唱のポイント) 詩の各連にポイントになる言葉があって、それを歌として、聴く人にうまく伝えられたらいいですね。
一連目「わたしにはすぎてる」、二連目「すこしわらっただけ」、三連目「らくに、くらせるのに」、四連目「きっとかなしむだけだから」、五連目「かわいいおんなのこのほうが」、六連目「ひきょうものよね」、などです。
考えてみると、そうした箇所でなくてもいいのですが、要するに、その部分の意味が結構分からなくなっている、文学作品なのです。 そして、もちろん、「わたしのことすきなのね」を自分なりの解釈で歌ってほしいですね。 |